ピキリ、俺の頭に漫画でよくある怒りマークが浮かぶ。

下に引く蜜は笑い声を零したあとすぐ、笑ったらダメだとわかっていたかのように慌てて口を両手で覆い、俺から顔を逸らす。

けど肩は震えてるし、指の隙間から普通に笑ってる声漏れてるし、すっげぇあからさまなそれは蜜らしくて可愛い面でもあるが、今は俺、怒ってるからね。悪い天使にはお仕置きを。天誅を下し返してやる。


「なあ蜜、なにがそんなにおもしろいの?」

「…えっ!?あ、う、ううん!ななななんでもないよ!?」

「ふーん…。なんでもないんだ。そっかそっか、なんでもないのに蜜笑うんだ。変なの〜」

「あ…っ、…へへっ。なっ、なんか急に笑いたくなっちゃったの!蜜変だね!うん、めっちゃ変!飛也もそんなときあるでしょ!?」

「ないかな」

「そっ、そっかぁ〜。そうだよねっ、ないよね!やっぱり蜜が変なんだねっ。そっかぁ〜、飛也はないかぁ〜。そっかそっか」

「(超目泳いでんだけど…。うける…)……蜜」

「ななななんでしょ!?」

「エッチしよっか?」

「っう、へっ!?」


そう柔らかく微笑んで言えば、瞬きを一度し終わる一瞬の時でりんご以上に耳まで真っ赤っかになった蜜の唇から素っ頓狂な声が上がった。

狙ったそのままの反応に内心ほくそ笑みながら、「さっきからずっと我慢してたんだけど、もう無理…」これでもかってぐらい色味を孕んで甘く、限界だと伝わるように吐息混じりに真っ赤な耳に唇を寄せて呟けば、ふるりと腰元を震わせた蜜。

カリ…ッ、熱を帯びた耳を歯で柔く噛んだ――ところで、すでにこれだけでもういっぱいいっぱいな蜜がお早い白旗を掲げる。


「…とー、や、ごめ…っ。いじわる、して、ごめんなさい〜…」