格好もつかなくて非常に情けなくもぐすっ、と鼻を啜って「……覚えて、くれてたんだ…」そう言えば、すぐに「当たり前だよっ!」って、返ってきた返事に胸がキュッ、と締めつけられる。


「飛也の誕生日忘れるわけないじゃん!…あっ、なにも言わなかったから…?違うの!その、サプライズしたくて…」


けど飛也、今日一日夜までバイトだって前に言ってたから、急にお家に来ちゃう形になっちゃって…。疲れてるのにごめんね…?

なんて、

「(なんで、そう…。…ああ、もう…っ、)」


なあ、神様。

俺、自分で言うのもマジで悲しいんだけど、超絶鬼のヘタレだし女々しいし(ド変態の)クソ野郎だしクズだし見た目は抜いて(ごめんほんとごめん)全然かっこいい彼氏じゃないんだけど、こんなにめちゃくちゃ愛されすぎてていいんですか。

一瞬サプライズって言葉に得意げな顔をしたドサブ野郎が浮かんだけど、デリートデリートデリートデリート。


ほんとに、俺のことどんだけかっこ悪くさせたら気が済むんだよキューティー怪獣め。覚えてろよ。俺もじゃっぶじゃぶに幸せに浸からせてやるからな。ぜってぇ容赦しねぇ。


体現された幸せが蜜の前では常にかっこつけてたい俺のメッキをボロボロと最後の一枚まで余すことなく全て剥がしてきて、

「――っみ、つ…っ」

思い返せば恥ずかしくなる泣き顔も涙声も曝す俺はぎゅうううっ、幸せで、愛しくてどうしようもない思いを蜜にありったけ伝わるように、強く強く蜜を抱きしめる。


「…っありがと」


宇宙一大事で愛しい人に言ってもらえる〝おめでとう〟がここまで破壊力抜群だとは想像以上。死ぬほど嬉しい。もう自分の誕生日を無下にしない。来年から休みとります、絶対。

毎年毎年、蜜の〝おめでとう〟が楽しみになる。