それなのに嫌じゃない――嫌じゃなかったと彼女の口から紡がれた真実。まるで一切の光を遮り立ち込める闇にパァーッと射した一筋の光。希望。
ようやく嫌じゃないのセリフ(もちろん蜜の音声そのまま)と意味をゴクン、と呑み込んだ俺の陰っていた瞳にはダイヤがキラッキラに輝く。
隠しきれない嬉しさとソワソワと下心。
だから浮かれてしまった。
なーんだ、全力で拒否られたけどよくある蜜ちゃんの照れ隠しかオッケーオッケー。ほんっと可愛い奴だな〜。と、じゃあ――と続けたセリフに首を縦に振ってくれると信じて疑わなかった俺は、セリフを最後まで言わせてもらえずほどなく撃沈。
なんでっ!!
あの蜜が嫌じゃなかったって言ったんだ!皆まで言わなくてもわかってもらえるであろうあの!蜜が!!
今までにないことが起こったら誰だってイケる!って思うだろ!?なんでダメなんだよ蜜〜…。
単なるおごりで沈没した俺の気分はるーるるる。再び熱くたぎろうとした身体も不完全燃焼。
がくっ、と落ち込んで項垂れる俺はダメだと言われたショックでそのあとの蜜のセリフをよく聞いてなかった。
それに付け足し、俺の下で蜜がどんな表情をしていたのかも気づかず見逃すという失態を重ね、この瞬間にしか見れない蜜を見なかったことにめちゃくちゃ後悔するのは僅か数秒後の未来での話。
とーや、と可愛い声が俺を呼ぶ。俺の胸元で服を握っていた小さな手が顔に伸びてきて、両頬を包む。
それに続いて上体を少し起こした蜜の顔が近づいてきて――ちゅっ、と唇に鳴ったのは甘いリップ音。
そして、
「とーや、誕生日おめでとう」