「エリー……」

「……大丈夫、です」

エリーは何度も深呼吸をする。

そして指輪にゆっくりと手を伸ばした。
冷たいはずのその金属が、どこか温かく感じる。

エリーは指輪を見つめる。

何も思い出せないが、確かに懐かしい感覚がする。
自分にとって、本当に大切なものだったのだろう。

「お前の事、俺の口から話す事はしない」

ウィリアムの言葉に、エリーは眉を下げる。

「……知りたかったら、ティーナという女性に話を聞くといい」

「……彼女は、どちらに」

「帝都だ」

「帝都」

リザの街だ、とぼんやり思う。
再び指輪に目を移す。

エリーは今、何も考えていない。

「……いつでもいい、行きたくなったら言って欲しい」

「……はい」

「その時は、俺も一緒に行こう」

「……はい」

ウィリアムの言葉に、エリーは切なそうに微笑んだ。