「二年前、エリカが海で溺れてしまった時。その時からずっと、胸に大きな穴が開いたみたいだった。何をしても楽しくなくて、いつも街を歩くとエリカの姿を探してた」
アンナは辛そうに顔を歪めている。
「だから、あなたが海で倒れているのをウィルが見つけて、連絡をくれた時。本気で思ったの。エリカが帰ってきてくれたんだって」
「私……」
「わかってるわよ。あなたはエリカじゃない。エリーって名前を付けたのは、完全に私の自己満足。本当にごめんなさい」
「……アンナさん」
「何?」
「私、アンナさんには感謝してるんです。名前をつけてくださったおかげで、記憶がなくても心細さを感じることはなくなりました。ここに存在してもいいんだなって思いました。だから、エリカさんの代わりだと思われていたとしても、私はとても感謝してるんです」
そう言って微笑む。
「……あなたのそういうところ、エリカに似てるわ」
「そうなんですか?」
「ええ。でも、似てない」
「……?」
アンナの言葉に、エリーは不思議そうに首を傾げる。
「一緒に過ごせば過ごすほど、エリーはエリカじゃなくて、エリーという人間なんだって思い知らされる。当たり前だけどね。そんな時、私はいつも思ってたの。違う。あなたはこうあるべきなのよって」
アンナはそう言って笑う。