「私、どうしたんでしょう」

不安そうにエリーが眉を下げる。
ウィリアムは真剣な顔でエリーを見つめる。

「……記憶が、関係あるのかも知れないな」

「記憶……」

「海辺に倒れていたんだ。船に関係があってもおかしくはない」

「でも私、何も思い出してないです」

そう言って俯く。
そんなエリーの頭を、ウィリアムが優しく撫でた。

「大丈夫だ」

エリーは首元の指輪に手を添える。

「でも、もし、船に乗ることで何か思い出せるなら」

「ダメだ」

エリーの言葉を遮るウィリアム。

エリーは不安そうにウィリアムを見つめる。

「どうしてですか……?」

「気を失うまでして思い出す記憶に何の価値があるんだ」

「そんな……」

エリーの顔が歪み、ウィリアムはエリーから視線を逸らした。


「……すまない。とにかく、無理はするな」

寝てろ、と言ってウィリアムは窓の外に視線を移した。
エリーもまた窓の外に視線を移す。

流れる景色を見守る空は、曇っていた。