「エリー」

「あ、シェル」

「……こんにちは」

「サラさん! こんにちは」

挨拶を交わし、そして改めて駅を出て街に入る。
そこには、白く、青い、幻想的な街が広がっていた。

「わぁ……」

思わず感嘆のため息を漏らす。
リヒトも口を半開きにして街を見ている。

「すげぇだろ。氷で出来てるんだぜ」

「これ、全部……ですか?」

「おー」

エリーは傍に建っていた建物に触れてみた。
氷だと言われて身構えていたが、冷たさはないようだ。

「冷たかったら生活していけねぇからな。特殊な氷らしいぜ」

「そうなんですね」

エリーは物珍しそうに街をきょろきょろと見回す。
今までに見てきた街とはまた違った景色だ。


水の都というだけあって、あっちこっちで水が流れている。
水路が所々に引いてあり、風の都よりも立派な噴水もある。

街の中も地面が全て透けて見えていて、海の中で泳ぐ魚たちの姿を見ることが出来た。


「あっちに、港」

そう言ってサラが街の奥を指さす。
近付いていくと、確かにそこには港があり、いくつもの船が泊まっていた。
水と氷で溢れている。そんな街だ。

「素敵な街ですね」

そう言ってエリーは街から、顔を上げる。
サラが優しく微笑んでくれる。
エリーはそれに笑みを返した。

いつもなら、美しいサラの微笑と共に、楽しそうな笑顔のアンナがいた。
かすかに沈んだ気持ちに気付かないふりをして、エリーは街の景色を楽しむことに集中した。