エリーとウィリアムは、水の都トレーネに向かっていた。
列車か船で行けるのだが、行く時は列車にして帰る時に船にしようという話になった。

エリーとウィリアムが向かい合い、窓際にリヒト。
サラとシェルとは駅で合流することになっている。

ダニエルは別の用事があり、祭り当日に行くとのこと。

そして、アンナは――。


「……すまない」

突然ウィリアムが声を発し、エリーはきょとんとして窓の外から視線を移した。

「アンナさんのことですか?」

「ああ」

「……謝らないでください」

そう言ってエリーは切なそうに微笑む。

アンナは、今回の祭りには参加しない。
そう言っていたらしい。

言い合いをしたウィリアムと会うのが嫌なのか、それとも。

リヒトがエリーの髪を引っ張る。
ぼーっとしていたエリーはそれに反応して窓の外へ視線を戻した。


外にはガラスで出来たような、透明感のある大きな街。
エリーは驚いたように窓に張り付いた。

「これが……トレーネ」

ガラスで出来ている、という認識はあながち間違いではないようだった。

駅に着き、列車から降りる。
足元を見ると、海が広がっていた。

地面が全てガラス張りのように、下が見えるようになっているのだ。