「ちょっと」

少年と会話をしていると、お店の入り口と反対方向から声が聞こえた。リザの声だ。

「……何してんのよ。早く並びなさいよ」

「リザさん」

「お前、そんなこと言ってる場合かよ」

「何よ」

「何かあったんだろ」

「……だから、何よ」

「おれ達は心配してんだぞ」

その言葉にリザは眉を顰める。

「……心配されたところで、状況が良くなるわけじゃないわ」

少年はリザの言葉に何も言えなくなる。
二人の間に険悪な空気が流れる。

エリーはリヒトと顔を見合わせ、そしてリザの方を向いた。

「……リザさん」

エリーの声に、リザはバツの悪そうな顔をする。

「……悪かったわね。今日はちょっと……バタバタしていて」

歯切れの悪い物言いをするリザ。
エリーは心配そうな表情で首を傾げる。

「どうかなさったんですか?」

少し言いにくそうに目を泳がせ、そしてリザは大きくため息をついた。

「……スタッフの数が圧倒的に足りないのよ。多めに手配していたはずなのに、いないの」

その言葉にエリーと少年は店内を見る。
確かにどのスタッフも忙しなく動き回っている。

お客さんもまだ営業開始したばかりだというのに、どこか不満げな表情が多いようだ。
再びリザに視線を移すと、リザは涙目になって眉間に皺を寄せている。