「カイ兄!」
「おー、シェル」
シェルが嬉しそうに近寄り、カイと呼ばれた少年が優しくシェルの頭を撫でる。
見た目はカイの方が幼く見えるため、どこか違和感のある光景だ。
不思議そうにしているエリーに気が付いたのか、アンナがこっそりと耳打ちする。
「カイくんはね、私達の中で最年長なのよ」
「え、そうなんですか?」
「彼は小人族だからね。見た目は幼いけど、立派なこの宿の経営者なんだ」
聞こえていたのか、隣でダニエルがそう補足する。
エリーは目を丸くしてカイを見つめる。
一通り皆との挨拶を終えたのか、カイはエリーに優しく微笑んだ。
「こんにちは。君がエリー?」
「は、はい。そうです」
「自己紹介が遅くなってごめんな。俺はカイ。君たちが泊まるこの宿のオーナーをしてるんだ」
幼い顔立ちなのにどこか貫録が感じられる。
エリーは慌てたように返事をした。
「エリーです。よろしくお願い致します!」
「よろしく。この間は、リートが世話になったみたいだな」
「いえ、そんな」
「俺からも礼を言うよ。どうもありがとう」
爽やかな笑みを向けられ、エリーも笑顔を返した。
「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました」
「……カイ、何故貴様が礼を言うんだ」
「当然だろ?」
リートが口を挟むと、カイは呆れたようにリートに目を向ける。
リートは表情を変えず、しかしどこか不服そうに腕を組んでいる。