ここは……?

 その瞬間、真生は冷えたノブをつかんで立っていた。

 目の前には地下の廊下。

 そこに階段を下りてきた斗真が現れ、こちらを睨む。

「なに手ぶらで出てきてんだ。
 地図取りに行ったんだろ」

 地理の教師に頼まれてきたと言う。

 あ、ああ、と真生は後ろを振り返った。

 自分は真っ暗な資料室の中に居たようだ。

 ……さっきのは白昼夢? 

 あの白い服の女が見せた、なにかの残像だったのだろうか。

 そう思ったが、まだ胸がドキドキしていた。

 男にのしかかられた嫌な重さもまだ身体に残っているというのに、上の階からは女生徒たちの楽しそうな笑い声が聞こえてきている。

「ごめん。
 ちょっと霊の気に当てられたみたい」
と斗真に言うと、斗真は地下を見回しながら、

「ま、この辺りは特に磁場が怪しいからな」
と言った。