ありがたいことに、外周はジョギングコースとして整備されており、それほど歩きにくくない。
 一般にも開放されているようで、犬を散歩する人や、近所の住民だろうか、Tシャツ姿で走る人がちらほらといた。
 コースの両側は大きな木で覆われていて、西日がきつい今の時間でも、木陰になっていて十分涼しい。もう少し先に目を向ければ、割と大きめの沼だか池だかもあった。

 無駄に広くてなかなか辿り着けないことに焦りばかりが募る。騙し騙し歩いていた足も段々と限界が近付いてきて、歩けなくなっては元も子もないと、仕方なく近くの石段に少しだけ腰を下ろすことにした。

「マジ信じらんないね」

 すると突然、背後から聞こえてきた憤った声。
 驚いて振り向けば、そこには西紅のジャージを着た三人の女の子が立っていた。うち一人は泣いている。
 恐らく私の姿は、背もたれにした巨木によって遮られ、彼女たちからは見えていないと思われた。

「ほんと、何かさ、幻滅した」

 両隣の二人は、泣いている子を必死で宥めているよう。
 肩の所に付けられているローマ数字は、私と同じ一年生のものだった。ちらりとしか見なかったから分からないけど、多分知らない子たちだ。

 ……まさか? 先輩から聞いた情報と一致する三人に、殊更身を潜めた。

「あんなやつ、やめて正解だよ」
「亜矢にあんだけ優しい態度取っといて、好きじゃなかったとかないよね」
「元気出しなよ、男なんて藤倉だけじゃないからさ」

 飛び出した名前にドキリとする。やっぱりそうだ。よもやこんな所でばったり出くわすとは。
 慎重に辺りを窺うが、藤倉君の姿はどこにもないようだった。
 彼女たちの台詞と、泣き暮れる女の子。状況からすると、告白は失敗に終わった、そういうことのようだ。それを見て安堵する自分が、少しだけ嫌になった。

「だって、本当に好きだったんだもん」
「分かるよ、でもね、亜矢を振ったあいつは偽善者ってことだよ。優しくしてさ、それで女子を勘違いさせた挙げ句思いっきり振って、陰で他の男子と、馬鹿な女がまた引っ掛かったって嗤ってんじゃないの?」
「それが藤倉君の手? ……最低」

 ぼそりと零れた低い声に、心底驚いた。
 どうやったらそんな結論に辿り着くのか。どうやったら好きな人を、そんな風に貶められるのか。

 根拠のない憶測。それによって伝染する悪意。あのときと同じで、それはやっぱり途轍もなく恐ろしかった。でもそれ以上に、今は悔しくて仕方がなかった。

 藤倉君はみんなに優しい。それは本当だ。好かれていると勘違いしてしまった? それも少しは頷ける。だけど、それだけじゃないじゃない。

「信じらんない」

 気付けば私は、口を開いていた。