「何となく察するのよ。高校三年生を受け持ったことはこれまで三回あるんだけど、三年生にもなると意識が高いというか、余裕がなくなるというか、自分に精一杯でね。成績順にクラスが分かれているわけではないから、ひとクラスには下から上まで満遍なく振り分けられるでしょ?そうすると、ちょっと怠けてる様に見える子がいると、気になってしまうみたい。しかもこれからになると、国立受験組には最大のストレスになるであろう私大推薦とか」


推薦受験と結果発表は年を越えるまでにわかることが多い。
なので二学期中に進路が決まる人も結構いる。そうすると、一月にセンター試験を控えている人間からすれば目障りだ。ストレスだ。本人に自覚がなくても、浮かれているのが雰囲気でわかるから。

しかも学校が掲げる「現役合格」という三年生の学年目標故、浪人回避に焦る人も出てくる。それで無理をして体調を崩したり、酷いと精神を病んだりする人も出てくる様で、教師はそういうことにも最大限気を使うのだと、来年30歳になる花純先生は言った。


「だから周りが八城さんのこと、あんまりよく思ってないこと分かっちゃうのよ。ごめんね、傷つけたいわけではないよ」

「分かってます。大丈夫です」

「どうかな?昼になると酒田先生ってふらっと何処かに行っちゃうし、話し相手が欲しいな、なんて」


内申あげるわよ、という声は弾んでいた。