「多分、雑誌かテレビじゃない? たまに取材とか来るし」

「テレビ……取材……! 芸能人の方なんですか? アイドルとか、あ、スタイルがいいからモデルさんですか? それとも女優さん?」


 少女は少しだけ口の端を上げると、長い前髪をかきあげた。


「そう言われるのは悪い気分じゃないけど。残念ながら、どれも違うわ。あたしはバレリーナなの」


 それを聞いた愛梨は、ぱっと顔を輝かせる。


「バレエをされているんですね! 通りでスタイルがいいと! 私も実は小さい頃、バレエを習っていたんです! ほんの数ヶ月で辞めちゃったんですけど」


 彼女はあっさりと言い切った。


「へぇ。そうなんだ。まぁあんたのことは全く興味ないけど」

「そ、そうですよね……ごめんなさい」


 言いたいことをハッキリという性格のようだ。

 落ち込んでいる愛梨をよそに、それまで黙っていた白露が彼女を席に案内する。


「お待ちしておりました、月峰鏡華(つきみねきょうか)様ですね」


 鏡華は眉をつりあげ、強い視線で白露をねめつける。いかにも気の強そうな顔立ちだ。

 とはいえ、顔にはまだあどけなさが残る。

 それもそのはず、普段は大人びて見られるが鏡華はまだ十二才、小学六年生だった。