「ダメね、泣いていたら。昭ちゃんが、私の笑った顔が好きだって、そう言ってくれたんです。だからいつまでも泣いていないで、笑わないと」


あぁ、彼女は乗り越えたのだな、と思った。

 あおいに会っていた時間はほんの僅かだったけれど、あおいはその時よりも、確実に前に進もうとしていた。


 最初に出会った時の、幻のように儚く消えてしまいそうな少女の面影は、もうなかった。


「私これから、今まで入院していて出来なかったことを、全部やります。友達をたくさん作って、行きたい場所に行って、どんなことでも挑戦して、夢を叶えて。

それでいつか、昭ちゃんにまた会えたら……そうしたら、お礼を言いたいな。昭ちゃんが守ってくれた命だから、大切に使わないと」


 愛梨は彼女の言葉に、何度も頷いた。

 きっといつか。それがずっと遠い未来だったとしても、二人がどこかで再会出来ればいい。

 今までたくさん苦しんだ分、どうかあおいさんが、幸せになれますように。


 心の中で、強くそう願った。