命を落としたのは、昭平さんだったんだ……。

 愛梨はその事実を知って、深い悲しみに襲われた。

 あおいは両手で顔を覆い、膝を折って絶望に染まった悲鳴をあげる。


「どうして昭ちゃんなの? 昭ちゃんが助かれば、私は何もいらなかったのに。昭ちゃんの命が助かるのなら、私の命なんていらなかったのに」


 白露はそれを聞かなかったように、いつもと同じ調子で話しかけた。


「今のあなたは、幽体離脱しているようなものです。これから自分の身体に戻られますか?」


 あおいは自分の両手の指先を見つめる。腕から指先に向かうにつれて色がだんだん薄くなり、指先にいたってはほとんど透明だった。今にも消えてしまいそうだ。タイムリミットが迫っているのかもしれない。


「もし私がこのまま死にたいって思ったら、死ぬことも出来ますか?」


 愛梨は顔を強ばらせる。 

 白露は何でもないように、涼しい笑顔で答えた。


「えぇ、できますよ。あなたの自由です。そちらをお望みですか?」


 白露の瞳に背筋が凍るような、冷たい光が宿る。