あの日も、彼は自分を置いて行った。
夏祭りに来て、花火を神社で見て、途中で口論になった。
あおいは石段を駆け下り、石段が終わった場所で、足を滑らせて転びそうになる。
それを支えようと、昭平は階段を駆け下り、彼女のことを抱き止めた。
二人の目の前に制御を失った車が突っ込んできて、昭平が轢かれ、命を落とした。
それが前回起こったことの、すべてだった。
だから今回こそは、同じ過去を繰り返さないように。
神社に行くのをやめて、違う場所で花火を見たのに。
結局何も変えられないのだろうか。
無力さで頭がおかしくなりそうだった。
それなのに昭平は、微笑んでいた。
「あおい、大好きだ」
痛いはずなのに、苦しいはずなのに、それでも彼は笑いながら、最後にはっきりと言った。
「俺の分まで、生きて」