「あおいが怖いって思うのは当然だ。だけど今のまま入院していても、ゆっくり身体が弱っていく。心臓は、生まれた時からずっと動き続けている。あおいの心臓はその間、ずっと負担がかかっているんだろ。だから一刻も早く、負担を減らすために手術をしたほうがいいって、おばさんに聞いた。間に合わなくなる前に、手術が受けられるうちに、病気を治してほしい」

「私、怖いよ。昭ちゃんに会えなくなるのは、怖い」

「……俺も怖いよ」



 その言葉を聞いて、あおいは泣きながら微笑んだ。

 彼もずっと怖かったのだ。

 だけど自分はそれに気付こうともしなかった。


「昭ちゃん、ありがとう、教えてくれて」


 あおいは彼の身体を抱きしめ、そっと唇を重ねた。



 花火はまだ続いていたけれど、そろそろ時間切れだ。

 二人は手を繋いで非常階段を降り、家に向かって道路をのろのろと歩く。


 家に帰れば、今日が終わってしまう。

 今日が終われば、昭平に二度と会えなくなる。



 この時間が永遠に続いたらいいのに。



 そんなことを考えていた、瞬間だった。


 突然耳をつんざくようなブレーキ音とともに、黒い鉄の塊が二人の前に飛び込んでくる。

 大きな手に身体をはね飛ばされ、あおいは地面に倒れた。


「痛っ……」