「昭ちゃん。私たち、別れようか」



 細い火柱が何本も何本も、光の絨毯のように無数に空へと打ち上がる。

 その眩しさから少し遅れて、パラパラパラと火薬の弾ける音が聞こえた。


 昭平は決して取り乱さず、落ち着いた様子だった。

 波のない海のように静かな瞳で、じっとあおいを見つめる。


「どうしてそんなことを言うんだ?」


 あおいが本気で別れたいと思っていないことなんて、彼は全部お見通しのようだ。


「……あのね、昭ちゃん。もし、私が未来のことが分かるって言ったらどうする?」


 白露は言った。

 運命を変えることは出来ないと。

 それでも時間をねじ曲げて過去に戻ることが出来たのだから、少しだけ足掻いてみたい。

 昭平はいつものように、真剣にあおいの言葉に答えた。


 どんなくだらないことを問いかけても、昭平はいつも真剣に答えてくれた。

 あまり笑わないし喋らないから、時々人から怖いと言われたりもするが、昭平は底抜けに優しい。付き合いが長い人間は、みんな昭平の心の広さと情の厚さを知っていた。あおいだってそのことを、誰よりも深く知っていた。


 昭平は落ち着いた声で言う。