「あおい!」


 あおいはぎゅっと唇をかみ締める。

 私一人じゃ、何にも出来ない。満足に、逃げることすら出来やしない。


 あおいはさらに逃げようとして、石段の途中で足をもつれさせ、転びそうになる。

 昭平は、咄嗟に彼女の身体を支えようとして、そして――。



 あおいはぎゅっと目をつぶり、頭を振った。



 あの時と同じことは、もう二度と繰り返さない。