困ると言われ、心臓がきゅうっと痛んだ。


「昭ちゃんは、私がいると困るよね」

「何を言っているんだ?」

「クラスの子と話してた方が、楽しそうだった」


 それを聞いた昭平は、むっとしたように顔を顰める。


「意味が分からない」

「昭ちゃん、やっぱり人気あるんだね。私より、きっと同じ学校の元気な女の子と付き合った方が、絶対に楽しい。私なんかといるから、昭ちゃんは苦労してばっかり……」

「おい、その辺でやめておけ」


 冷静に忠告されたのが、よりあおいの心を傷つけた。

 昭平が、どれだけ多くの物を犠牲にして自分に尽くしてくれているのか、知らないわけがない。

 部活で忙しいのに、受験勉強もあるのに、疲れているのに、それでも昭平はあおいの病院に毎週通ってくれた。

 嬉しいと思う反面、本当はずっと聞いてみたかった。


「ねぇ昭ちゃん。私と別れたいと思ったこと、ない?」


 彼の顔をまっすぐに見られない。

 昭平は寸分の迷いもなく、きっぱりと答えた。


「ないよ」

「……嘘。私といると、窮屈でしょう。ずっと私が体調を崩さないか、気にしないといけないし、身体が弱いから。夏なのに海に行ったりプールに行ったりも出来ない。長い距離を歩けないから、旅行や遊園地にも行けない」

「別に俺は海もプールも行きたくないよ。旅行や遊園地だって、行きたいなら元気になってから行けばいいじゃないか」

「元気になんてならないよ!」