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やかましい声に居心地が悪くなったあおいは、一人でそっと彼らの輪を抜け出した。
あおいがいなくなったのに気付いた昭平は、彼女を追いかける。
「おい、あおい待てって! じゃあ俺、もう行くから」
あおいはひどい頭痛と目眩、それに吐き気を感じて、静かな場所を目指して歩いた。
人混みが、気持ち悪い。
屋台がある通りから外れ、近くにある神社の石段を上がると、だいぶ人の気配を感じなくなった。
昭平は彼女を必死に追いかけ、石段の途中で座り込んだあおいの頭を撫でた。
やはり顔色がよくない。
「外に連れ出すのは、無理しすぎたかな。そろそろ家に帰ろうか」
しかしあおいは、その言葉を頑なにはね除ける。
「嫌だ」
昭平は困り顔で彼女を見下ろす。
「……あおい」
「私、帰りたくない」
「我が儘言わないでくれ。困るよ」