□
夏祭りに来たあおいと昭平は、とても楽しそうだった。
祭りにいる他のカップルがそうしているように、手を繋いで並んで歩き、屋台を眺めながら他愛ないことを話す。
途中で焼きそばを買い、近くにあったイスに座って仲睦まじげに食べている。
白露の店で出される料理は思い出の味をできるだけ再現しているようだけど、好きな人と一緒に食べる料理は、きっと一人で食べるそれより何倍もおいしいはずだ。
愛梨は二人を幸せな気持ちで眺めながら、自然と溜め息を漏らした。
「はぁー、お祭りに来ているのはいいですけど、何も食べられないのは残念ですねぇ。私もリンゴ飴食べたいですー。綿菓子ー、大判焼きー、ベビーカステラー、ソフトクリームー」
「うるさいですねぇ、自分の指でもかじってなさい」
「あまりにも冷たい……」
やることがないので、愛梨はきょろきょろと周囲を見回す。
「それにカップルがたくさん。人のデートを黙って見ているのって、何だか切ないですねぇ」
「愛梨にはそんな相手がいないからそう思うのでしょう」
白露が当たり前のようにそう言い放つので、愛梨は声を荒げた。
「ど、どうして相手がいないって決めつけるんですか!?」
「おや、いるんですか?」
愛梨は悔しいと思いつつ声を絞り出す。
「残念ながら……」
白露はカラカラと声をたてて笑う。
「いいじゃないですか。来世に期待しましょう」
「来世!? そこまで待たないとダメですか!? 私にだって、きっと数年後には素敵な出会いがありますっ!」
「そうですか。それはよかったですね」
興味がなさそうにそう言って先に進む白露の後ろ姿を、愛梨は複雑な気持ちで眺めていた。
夏祭りに来たあおいと昭平は、とても楽しそうだった。
祭りにいる他のカップルがそうしているように、手を繋いで並んで歩き、屋台を眺めながら他愛ないことを話す。
途中で焼きそばを買い、近くにあったイスに座って仲睦まじげに食べている。
白露の店で出される料理は思い出の味をできるだけ再現しているようだけど、好きな人と一緒に食べる料理は、きっと一人で食べるそれより何倍もおいしいはずだ。
愛梨は二人を幸せな気持ちで眺めながら、自然と溜め息を漏らした。
「はぁー、お祭りに来ているのはいいですけど、何も食べられないのは残念ですねぇ。私もリンゴ飴食べたいですー。綿菓子ー、大判焼きー、ベビーカステラー、ソフトクリームー」
「うるさいですねぇ、自分の指でもかじってなさい」
「あまりにも冷たい……」
やることがないので、愛梨はきょろきょろと周囲を見回す。
「それにカップルがたくさん。人のデートを黙って見ているのって、何だか切ないですねぇ」
「愛梨にはそんな相手がいないからそう思うのでしょう」
白露が当たり前のようにそう言い放つので、愛梨は声を荒げた。
「ど、どうして相手がいないって決めつけるんですか!?」
「おや、いるんですか?」
愛梨は悔しいと思いつつ声を絞り出す。
「残念ながら……」
白露はカラカラと声をたてて笑う。
「いいじゃないですか。来世に期待しましょう」
「来世!? そこまで待たないとダメですか!? 私にだって、きっと数年後には素敵な出会いがありますっ!」
「そうですか。それはよかったですね」
興味がなさそうにそう言って先に進む白露の後ろ姿を、愛梨は複雑な気持ちで眺めていた。