確かに誰も愛梨と白露の存在には気付かないが、祭り囃子を聴きながら露店を見て回るのは、なかなかに楽しいものだった。


「そういえば、白露さんってどうしていつも着物を着ているんですか?」


 白露は今日も深紫の羽織に袴姿だ。ある意味この祭りにいる誰よりも本格的な格好に見える。


「この服が気に入っているからです。似合うでしょう」

「はぁ、似合いますけどそれだけなんですか?」


 理由になってない回答だったけれど、それ以上ツッコむ気にもならなかった。