その問いに、白露は冷静に首を振る。


「最初に言わせていただいたように、我々のお手伝い出来ることには限りがあります。夏祭りに行かなくても、もちろんいいですよ。ただ、時間をさかのぼれるのは一度きりだということをお忘れ無く」


 あおいは力が抜けたように目を閉じる。


「そうですよね。むしろこうやってもう一度会えるだけで、奇跡みたいで……充分贅沢ですよね。だけど私、昭ちゃんと、もっと一緒にいたいな」


 彼女の声が、涙で滲んで掠れていく。


「本当は、これからもずっと」


 一度溢れた涙は、堰を切ったように次から次へと流れていく。


「……ごめんなさい」


 いたたまれない気持ちになった愛梨は、彼女をしばらく一人にしようと考えた。


「いえ、私たちは、外に出ていますから。気にしないでください」


 病室の扉ごしに、押し殺したようなあおいの泣き声が聞こえた。

 愛梨は眉を寄せ、俯きながら苦しげに漏らす。


「白露さん。あおいさんのために、何か私が出来ることはないんでしょうか?」

「ありませんね」


 きっぱりと言い切られ、胸の奥に重い物が沈んだような気持ちになった。

 白露は表情のない顔で佇んでいる。念を押すように、白露は付け足した。


「人の生き死には変えられません」