「小学生の時は、よく夫婦夫婦ってからかわれました。私は小さい頃から身体が弱くて、よく学校を休んでいたんですけど、それでも小学二年の時までは、まだ普通に登校出来る日が多かったんです。
それがだんだん具合が悪くなって、ほとんど毎日入院するようになって……」
自分と同じ年頃の少女が、毎日病室で一人で過ごしてきた。そのことを想像すると、愛梨は切ない気持ちになった。
「お互い子供の頃から知ってるけど、昭ちゃんは、すごく格好良くなりました。剣道も大きな大会でたくさん優勝して、実は女の子からも人気があるんだって、同級生の友達に聞きました。
私は何にも変わらなくて、何も出来ないままなのに」
白露は前に進み出ると、あおいに問いかける。
「あなたが後悔しているのは、夏祭りの日ですね」
それを聞いたあおいは、はっとしたように目を見開いた。
何かを畏れるようにぎゅっと自分の指を組み、小さな声で話す。
「そうです。一時帰宅した、翌々日。昭ちゃんと、二人で夏祭りに行くことになっているんです。
だけどその帰り道、私のせいで、昭ちゃんとケンカして……結局、謝ることすらできなかった。私……ずっとそのことを後悔してたんです。間に合わなくなる前に。昭ちゃんと会えなくなる前に、せめて彼に謝りたい」
あおいは白露の手をつかみ、懇願した。
「彼は私といないほうが、幸せになれるはずなんです。どうにかなりませんか? 私がもしお祭りに行くのを辞めたら、運命は変わりますか!?」