「今の昭ちゃんの試合は、もっとすごいんだろうなぁ。早く見に行きたい」
「部活はやめたけど、道場に通うのはやめてない。またいつでも見に来ればいい」
「うん、そうだね」
それまで朗らかに会話が続いていたが、昭平は椅子に真っ直ぐ座りなおし、あおいを真剣な表情で見つめる。
「検査結果が出る日だって聞いてたから」
それを聞いたあおいは、申し訳なさそうに頭を下げる。
「いつもごめんね、学校で疲れてるのに、遠回りさせて病院まで来させちゃって」
「謝るなって言ってるだろ。俺が来たいから来てるだけだ。で、どうだった?」
焦ったようにそうたずねる昭平を安心させるように、あおいはやわらかく微笑む。
「うん、問題ないって」
あおいの笑顔につられて、昭平の表情もやわらいだ。
「そうか、よかった。それなら明日から三日間、一時帰宅出来るんだろ? おばさんが、荷物をまとめておいてくれって言ってた。後で車で取りにくるって」
小学生の頃からの付き合いなので、昭平はあおいの家族からすると息子のようなものだった。彼があおいの精神的な支柱になっていることを、あおいの両親も分かっているのだろう。
「お医者さんに許可を貰ったから、明日から帰宅出来るって。それに無理をしなければ、外出も大丈夫だって」
「そうか」
昭平は寡黙な少年だ。必要以上のことは喋らない主義らしい。
それでもあおいの容態が落ち着いているということを知った昭平は、先ほどよりも格段に明るい表情だった。
あおいは彼のことを眩しそうに見上げて、目を細めた。
「昭ちゃん、明後日の夜、一緒に夏祭りに行こう」
昭平は一瞬驚いたように目を見開く。