あぁ、あおいさんにぴったりだ。
昭平を初めて見た時、愛梨は一番にそう思った。
何かのスポーツをやっているのだろう、昭平は姿勢がよく、身体は筋肉質だ。
髪の毛は黒の短髪。
キリッとした眉の下で輝く聡明な瞳に、真面目で誠実そうな人だという印象を持った。 昭平は慣れた様子で病室にたどりつくと、軽くノックをして扉を開く。
あおいはまだ検査中だ。
あおいがいないことに気付いた昭平は、近くにあった椅子に座り、鞄を足元に置いて置物のように静かにあおいを待つ。高校から直接病院に来たらしく、服装は制服だ。
静かな病室で耳をすませていると、窓の外にいる蝉の鳴き声が聞こえた。
やがてあおいが検査から帰ってきた。
「お疲れ様、昭ちゃん。部活は?」
「三年はもう引退なんだ。たまに後輩の指導で顔を出すくらい」
それを聞いたあおいはベッドに腰掛けると、少し残念そうに彼を見つめた。
「そっかぁ、もう引退なんだね。高校の三年間って、あっという間なんだ。私も昭ちゃんの試合、直接見に行って応援したかったな。優勝したんでしょ?
すごいなぁ、昭ちゃん小学生の時から剣道やってたけど、すごく強くなったんだね」
それまで真面目な顔をしていた昭平は、少し照れたように眉を寄せる。
「別に、わざわざ見に来るほどたいしたものじゃない」
「そんなことないよ。小学生の時見た試合は、すっごく緊迫感があって空気がピリピリしてて、見てるだけの私が泣いちゃったもん」
その言葉を聞き、昭平は低い声をたてて笑った。
「昔のお前、泣き虫だったからな。今もか」
剣道の話を聞いた愛梨は、妙に納得した。
昭平の年のわりにずいぶん落ち着いた雰囲気と礼儀正しい感じは、武道をやっている人間にぴったりだと思う。