そう問いかけると、あおいは恥ずかしそうに頬を赤く染める。


「こ、恋人というか……! うん、一応恋人、かなぁ……」


 さっきまでは凜とした様子だったのに、声はだんだん小さくなり、最後には真っ赤になって黙り込んでしまった。初々しい反応だ。

 それにしても、小学生の頃から毎週二回お見舞いに来てくれる、というのはすごい。


 彼は一体、この病院に何度足を運んでいるんだろう。

 きっとあおいのことが、それほど大切なのだろう。


 愛梨は温かい気持ちになるのとともに、小さく胸が痛むのを感じた。こんなに互いのことを大切に思っているのに、あおいは彼と二度と会えなくなると言った。それを想像すると、やりきれない思いでいっぱいになる。


 しばらく病室で話していると、先ほどの看護師があおいのことを呼びに来た。どうやら検査の時間らしい。


「私、行ってくるわ」

「はい、気をつけて」


 検査をするところや医師と話すところは見ないほうがよいだろうと判断し、愛梨と白露は彼女のことを病室で待っていることにした。


「四時半だから、そろそろ昭ちゃんが来てくれる頃だと思うわ」


 最後にそう言い残して、あおいは医師の元へ向かった。

 あおいの言う通り、ちょうど四時半ぴったりになると、凜々しい顔の少年が廊下を歩いているのが見えた。夏用の制服を着用している。白いカッターシャツと灰色の長ズボンだ。


 彼は看護師と擦れ違うと、その度挨拶し、軽く世間話をしている。何度もお見舞いに来ているから、彼も看護師たちに顔を覚えられているのだろう。


「あの人があおいさんの言っていた、昭ちゃんって方ですね」

「えぇ、彼が政木昭平さんです」