そんなことを話していると、部屋に若い看護師が入ってきた。静かな病室に、スチール製のカートを引く音が響く。


「失礼します。あおいちゃん、検温の時間です」


「はい」


 どうやら一日に何回か、体温を測るらしい。あおいは慣れた様子で体温計を受け取ると、看護師に体温を伝える。看護師は明るくて優しそうな女性だった。付き合いが長いのか、二人は打ち解けた雰囲気だ。


「あと血圧も測ろうか」

「はい」


 看護師は記録をし終えると、不思議そうにあおいのことを見つめる。


「今、誰かと話してなかった?」


 あおいはふわりと微笑んで答えた。


「もしかしたら、寝言を言ってたのかもしれません。不思議な夢を見たので」

「あら、そうなの。今日の午後には検査があるから、直前にまた声をかけに来るわね」

「はい、ありがとうございます」


 看護師が出て行くと、あおいは困惑したように愛梨と白露へ視線をやった。


「お二人のこと、見えていないみたいですね」


 白露は慣れた口調で説明する。