白一色の病室の中、真っ白なレールカーテンの向こうに、あおいはいた。


 大きなベッドのリクライニングを半分くらいまで起こして腰掛けている。愛梨と白露を見つけると、あおいはやはり儚げに微笑む。しっかりとつかんでいないと、消えてしまいそうだ。


 白露庵に訪れた時と同じ、白地にピンクの花柄のパジャマを身につけ、グレーのカーディガンを羽織っている。

 あおいは穏やかな声で二人に話しかけた。


「本当に過去に戻ったんですね。信じられない」


 愛梨は彼女の体調を気遣うように声をかける。


「あおいさん、体調は大丈夫ですか? 起きていて、苦しかったら寝ていてください」


 すると彼女は笑って、平気そうに手を振った。


「大丈夫ですよ。激しい運動さえしなければ、普通の人とほとんど同じように過ごせるの。

暇な時は病院の中をうろうろして、無駄に売店に行ったりしてるし。話し相手がいないのが退屈だから、二人がいてくれて助かります。

ここにいる楽しみって、食事のメニューが何か考えることと、お見舞いに来てくれる人を待つことくらいだから」