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太陽の光があまりにも眩しすぎて、愛梨は思わず目を細める。
近くにある木から、蝉の鳴き声が聞こえた。
誰にも説明されなくたって、季節が夏だということはよく分かった。
あおいが食べていたのが屋台で出される焼きそばとかき氷だったことから、どこかの祭りに行ったのだろうとは思っていた。それにしても一瞬で場所も季節も変わってしまうのは、やっぱり何度経験しても慣れないものだ。
愛梨は周囲をきょろきょろと観察し、あおいの姿を探す。
自分がいるのが、大きな建物に囲まれた庭だということに気付いた。
白い建物の廊下を、悠然と歩いていく白露の後ろ姿が見える。
「白露さん、待って下さい! ちょっと、聞こえてますよね? 白露さん!」
完全に無視である。
絶対にわざとだ。軽くスルーされたので、愛梨は急いで白露の姿を追いかける。
そして通りすがる人々の姿を見て、呟いた。
「ここは……病院ですね」
上下白の看護服を身につけた看護師たちが、忙しなく病棟を行き来している。
一方廊下の手すりにつかまった老人は、入院着でゆっくりゆっくりと、かたつむりのように前に進む。
歓談室では見舞いに来た家族と入院している患者が、楽しそうに語らっていた。
かなり大きな病院だ。病院というのは、いつ来ても独特の雰囲気がある。
スタスタと歩いていく白露は、ある病室の前で足を止めた。
愛梨は壁にかかったネームプレートを確認する。
『水瀬あおい様』
ここだ。
あおいがずっと入院しているという話を思い出して、病室の中に入ろうとする白露を引き留めた。