白露の正体は、実は狐のあやかしである。
愛梨も詳しいことはよく知らない。
接客する時は人間に化けているらしいが、彼の主食は『店に来る人間の幸せな気持ち』らしい。一応普通の料理を食べることは出来るが、それでは彼の空腹は満たされないらしい。
そのため効率よく食事をとるため、誰かを幸せにする目的であの料理店を開いているというのだ。
「でも和田さん、うまくいったみたいでよかったですねぇ」
仲良く歩いていく和田と園子を見守り、愛梨は軽い足取りで前に進む。
「まぁあの後二人が本当に幸せになれるかどうかは、神のみぞ知るというところですけどね」
「白露さんはまたそうやって、意地悪を言う」
未来のことは分からない。
それでも愛梨は、何となくこの先の二人は、以前よりうまくいくのではないかと微笑んだ。
白露は背筋を伸ばして悠然と歩きながら、夜空に輝く月を見上げて楽しげに目を伏せた。