和田は園子のことを見つめる。

 園子の頬や腹には肉がつき、随分ぽっちゃりした体型になった。


 今目の前にいる園子は、結婚した当初のように若くて華奢で、可愛らしい女性ではない。

 だけど当然、自分もあの時のように、元気に満ち溢れた若者ではない。

 何しろ二十年も経ったのだ。

 その間、和田と園子はずっと一緒にいた。


 決して楽しいことばかりではなかった。

 それでも、確かに積み重ねてきた時間が二人の間にある。

 最初に出会った頃のような、燃えるような恋はもう二人の中にはなくなってしまったかもしれない。長い時間を経て、形は変わってしまったかもしれない。けれど彼女の中には、今でも確かに和田を心配してくれる気持ちがあるようだ。


 恋はやがて熱を失い、冷めていく。

 それでも最後に残ったものがあるとしたら、それはきっと、家族への愛じゃないだろうか。

 手で触れられないほどの、炎のような熱い感情ではない。けれどその愛情は、ほんのりとあたたかくて、寒い日に飲むココアのように心地のいいものだった。


 和田は空を見上げながら、だんだん楽しい気分になってきた。

 歌でも歌い出したい気持ちだ。


「久しぶりに、二人でデートでもしようか」

「何をバカなことを言ってるの」

「いいじゃないか。最近二人で出かけていないだろう」