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和田はなぜか、夜の街をふらふらと歩いていた。
いつも使っている駅の前だ。
ぼんやりと月を見上げながら、どうして自分はこんな場所にいるのだろうかと考える。
最初はスーツ姿だから会社帰りかと思ったが、手には鞄を持っていない。
何か、とてもいいことがあったような気がする。その証拠に、お腹と胸のあたりがふわふわして温かい。
けれどどうして自分がここにいるのか、どうして妙に幸せな気分なのか、さっきまで自分が何をしていたのかは、とんと思い出せなかった。
和田がまだ夢見心地で夜の駅前を歩いていると、突然後ろから肩を引っ張られた。
「あんた!」
嫌と言うほど聞き慣れたその声に、和田は思わず硬直した。
目の前に現れたのは、髪を振り乱して怒るセイウチだった。
セイウチが激怒している。
怒りのセイウチだ。
そうだ、確かここに来る前、セイウチとケンカした気がする。いや、ケンカにもなっていないか。彼女の態度に失望し、自分が一方的に逃げ出したのだから。
最近ついぞセイウチの笑顔を見ていないが、ここまで猛烈に怒るセイウチを見たのも、久しぶりだ。
「園子、どうしてこんなところにいるんだ」
声をかけたのと同時に、猛烈な罵声が飛んでくる。
「どうしては、こっちのセリフでしょうが!」
「どうしてって、俺は晩飯を食べに、駅まで……」
「それで一週間も連絡なしにいなくなるのかい!? あんた、この一週間どこをほっつき歩いてたの!?」
「一週間!? 一週間って、一体どういうことだ?」
「どういうことか聞きたいのはこっちだよ!」
和田はなぜか、夜の街をふらふらと歩いていた。
いつも使っている駅の前だ。
ぼんやりと月を見上げながら、どうして自分はこんな場所にいるのだろうかと考える。
最初はスーツ姿だから会社帰りかと思ったが、手には鞄を持っていない。
何か、とてもいいことがあったような気がする。その証拠に、お腹と胸のあたりがふわふわして温かい。
けれどどうして自分がここにいるのか、どうして妙に幸せな気分なのか、さっきまで自分が何をしていたのかは、とんと思い出せなかった。
和田がまだ夢見心地で夜の駅前を歩いていると、突然後ろから肩を引っ張られた。
「あんた!」
嫌と言うほど聞き慣れたその声に、和田は思わず硬直した。
目の前に現れたのは、髪を振り乱して怒るセイウチだった。
セイウチが激怒している。
怒りのセイウチだ。
そうだ、確かここに来る前、セイウチとケンカした気がする。いや、ケンカにもなっていないか。彼女の態度に失望し、自分が一方的に逃げ出したのだから。
最近ついぞセイウチの笑顔を見ていないが、ここまで猛烈に怒るセイウチを見たのも、久しぶりだ。
「園子、どうしてこんなところにいるんだ」
声をかけたのと同時に、猛烈な罵声が飛んでくる。
「どうしては、こっちのセリフでしょうが!」
「どうしてって、俺は晩飯を食べに、駅まで……」
「それで一週間も連絡なしにいなくなるのかい!? あんた、この一週間どこをほっつき歩いてたの!?」
「一週間!? 一週間って、一体どういうことだ?」
「どういうことか聞きたいのはこっちだよ!」