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和田が意識を取り戻すと、目の前には若い頃の園子も、キャンドルの灯ったレストランもなかった。
板張りの天井を何となく眺めていると、黒髪の少女が自分の顔を覗き込んだ。
「お帰りなさい、和田さん」
愛梨にそう言われ、白露庵に戻ってきたのだと認識する。
近くに立っていた白露は少し冷めた表情で、意地の悪い声を出した。
「おかえりなさいませ、和田様。一時の感情に流されて、結局以前と同じ未来を選ばれましたね。人間とは、失敗から何一つ学ばない生き物ですね」
白露の言葉がぐさりと和田の胸に突き刺さる。
「どうして白露さんは、そういうことを言うんですかっ! 和田さんは、自分で園子さんといる未来を選んだんですよっ! 素敵じゃないですか!」
愛梨は彼に噛みつくが、白露は飄々とした態度でそれを受け流す。
「だって和田様はセイウチに、もう何年も悩まされているんですよ。果たして一時の愛の力だけで、乗り越えられるものでしょうか?」