愛梨は必死に和田を説得する。


「とりあえず様子だけでも見に行きましょう! 園子さんの姿を見れば、考えも変わるかもしれませんよ!」

「考え、変わらない方がいいと思うんだけど……」

「園子さんのこと、気にならないんですか?」


 和田は助けを求めるように、白露のことを見た。


「ど、どうすればいいでしょうか」


 白露は腕を組み、呆れた様子で二人のことを眺めている。


「決定権は和田様にあります。どうぞご自由に」


 正直、気にならないわけがないのだ。


「そ、それじゃあ、少し見るだけで……」


 和田はまだ煮え切らない気持ちのまま、普段着の上にコートを羽織って部屋を出た。


 □


 和田たちは、園子がいるレストランの向かいにある建物までやって来た。

 レストランの窓はガラス張りなので、向かいのビルからでも頑張れば何となく様子を伺うことが出来た。

 愛梨はビルの窓にべったりと張り付いて園子を探す。


「あっ、園子さんいました!」


 約束通り店に到着した園子は、レストランの席に一人で座っていた。 

 本来なら白露の店で和田が食べたように、まず前菜のエビとトマトのソテーから始まり、順番に料理が置かれていく。

 しかしテーブルの上には、水の入ったグラスしか置かれていない。

 園子は石のように辛抱強く座ったまま、和田を待ち続けていた。

 和田は複雑な面持ちで彼女を見守る。

 周囲では他の着飾った客が楽しそうに食事をしているなか、一人で不安げな表情で座っている園子の姿は、見ていて痛々しかった。