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 和田はぼんやりとした頭で立ち上がり、部屋のカーテンを開く。

 すると眩しい朝日が和田に降りそそいだ。狭くて古いアパートだが、日当たりだけは抜群だったのを思い出す。


「あれ? さっきまで夕方でしたよね?」


 相変わらず表情が読めない白露が、ニコニコ笑いながら答える。


「申し訳ありません、少し時間を飛ばさせていただきました。私共も、時間の流れ通り和田様にずっと付きそっているわけにはいきませんので。ちなみに今日が、プロポーズ予定日の、当日の朝です」


 和田はしばらく朝日を見つめていた。

 そして決心したように、大きく頷いて声を出す。


「決めました。私は今日、待ち合わせに行きません!」

「えっ!?」

「今日は彼女の誕生日です。そんな大切な日に約束をすっぽかせば、彼女も私に愛想をつかして、他の人と付き合ってくれるかもしれません。その方が、お互いのためにいいと思うんです」


 愛梨は和田の肩をがくがくと揺さぶって問いかける。


「ほ、本気ですか和田さん!?」

「はい、私はそのためにここに来たんです! もう決めました! 結婚やめます!」