それを聞いた愛梨が目を丸くして叫んだ。


「そうなんですか!? 園子さんかわいそうです!」

「ちっ、違いますよ!」


 和田は目をしょぼしょぼさせつつ、困惑しきった様子で言う。


「今でこそぐうたらでセイウチですが、曲がりなりにも結婚を決めた女性ですよ。もちろん本気で好きだったし、当時は命にかえても彼女を守りたい、彼女以上に大切なものはないと思っていました」

「そしてそちらの指輪を渡されたのですね?」


 白露に声をかけられ、和田は机の上に置いてあった指輪の箱を取り上げた。

 箱を開くと、小さな石のついた婚約指輪が入っていた。


 和田はそれをじっと見つめながら、溜め息をついた。


「婚約指輪か、懐かしいな。この指輪も、今はどこに行っちゃったんだろうなぁ……。当時は必死に身を粉にして働いて、やっとの思いで買ったんだけど。もう捨てられちゃったのかもしれないなぁ」

「そんな……」


 寂しそうに指輪を見下ろす和田に、愛梨は何と声をかければいいのか分からなかった。