「奥様ですか? そうですね、かわいいですよね!」

「うん、すごくかわいかったんだ……。昔の妻は、本当にかわいかったんだ。今はセイウチのように家でずっとごろごろしてるけど、昔は体重も今の二分の一くらいで、華奢で優しくて……いつもニコニコしてて、守ってあげたくなるような、本当に儚げな女性だったのに。なのにどうして、どうして二十年たったら、こんなことに……」


 そう言って和田はおうっ、おうっと声をあげながら号泣する。

その様子を楽しげに見守りながら、白露が呟いた。


「思い出し号泣症候群ですね。皆様過去に戻ったことがきっかけで、そのような状態におちいられます」


 愛梨が呆れたように肩をすくめる。


「白露さんは、また適当なことを言って……」


 いつまでも泣いていても仕方がないので、和田はとりあえず自宅に戻ることにした。