聞き覚えがある声に、和田ははっとして後ろを振り向いた。
グレーのスーツを着た女性が、和田を見つけて嬉しそうに駆け寄ってくる。
和田は彼女の姿を見て、思わず瞳を輝かせた。
「あれが奥様ですか?」
「そ、そうです、若い頃の妻です! あ、でもあなたたちのことを何と説明すれば……」
和田が混乱していると、白露は落ち着いた声でそれに応じる。
「その点はご心配なく。私と愛梨は、この時代の人間には見えませんから」
「み、見えない? 何でもありだなぁ」
「私たちはこの時間軸の人間ではありませんからね。当然といえば当然です。ですのでどうぞお気遣いなく」
和田園子を見つけた愛梨は、感心したように声をあげる。
「うわぁ、すごく可愛い方ですね。和田さんからお話を聞いた時は、どんな恐ろしい人だろうって思ったんですけど」
それを聞いた白露が、楽しそうに懐から何かを取り出す。
現在のセイウチの写真だった。
「ちなみに現在の奥様のお姿は、こちらです」
園子の写真を見た愛梨は、若い園子とその写真を見比べ、はぁーと溜め息をもらした。
「えっと、その……ずいぶんと大きくご立派に成長して……すごく、強そう……ほ、包容力がありそうです!」
正直な娘である。