真っ青な顔になった和田を励ますように、愛梨が笑いかける。


「白露さんは大袈裟に言っていますけれど、さすがに地球滅亡はしないと思います。とはいえ、人生を大きく変えてしまう結果になるかもしれないので、それくらいの覚悟を持って下さいってことを言いたいんだと思います」

「なるほど、分かりました。とにかく、こうして話していても料理が冷めてしまうので……」


 和田はキリリと眉を上げると、勢いよく手を合わせた。


「いただきます!」


 そして並んでいたフォークとナイフを手に取ると、怒濤の勢いで目の前にある料理を食べ始めた。

 何しろ和田は、猛烈に腹が減っていたのだ。



 料理は絢爛豪華な見た目に違わず、夢のように美味しかった。

 一気に食べるのがもったいなくて、一口ずつゆっくり食べようとした。

 しかし怒濤の旨さが洪水のように流れ、動かす手を止めることが出来なかった。

 舌の上で滑らかに流れるクリーミーなビシソワーズ。アンチョビの絶妙な塩辛さ。サーロインステーキには余分な油は一切なく、噛めばじゅわっと肉汁が溢れる。

 どうしてこんなに旨いんだ!? そう理不尽に怒り出してしまいそうなくらい旨い。

 気が付いた時には、皿はすべて空になっていた。


 和田は幸福な満腹感に包まれながら、穏やかに目蓋を閉じた。