みさきと男たちの間に、駆けつけた愛梨が両手を広げて割って入った。

 愛梨は強い視線で男たちを睨みつける。


「嘘つきっ! 白露さんが、りゅーちゃんはもうすぐお母さんが迎えに来るって言ってたもん。だから他の場所に連れて行く必要なんてないよ! みさきちゃん、絶対に渡さないで!」


 青龍は嬉しそうに鳴き声をあげて、愛梨の胸に飛び込んだ。

 男たちは暗い目つきで愛梨を見下ろす。


「あなたたち、遊びで動物を撃っている人でしょ? りゅーちゃんにも、ひどいことするの? 絶対に渡さないから!」


 愛梨が怒っているのを見て、背の高い男は仄暗い笑みを浮かべた。


「分かった、仕方ない。こいつのことは諦めよう」


 そう言って、長身の男は愛梨たちに背を向ける。

 本当に諦めたのだろうか? 

 愛梨が拍子抜けした一瞬の隙を見て、男はみさきの身体を自分の方へ引き寄せる。

背の高い男はみさきの首に手を押し当て、力をこめた。


「みさきちゃんっ!」


 突然首を絞められたみさきは、苦しそうに足をジタバタさせてもがいている。


「お前、こいつがどうなってもいいのか? 友達じゃないのか?」


 太った男にとってもそれは予想外の出来事だったようで、背の高い男に忠告する。


「お、おい、さすがにガキに手を出すのはやべぇよ!」

「分かってるよ、俺だってガキを痛い目に合わせるつもりはない。お嬢ちゃんがそいつを渡してくれれば、この子には何もしないよ。だからさっさと渡せ!」


 愛梨はどうすればいいのか分からなくなり、硬直していた。

 男の目が見開かれ、怒号が響き渡る。


「いいから早くそいつを俺たちに渡せ!」


 愛梨は目の前が真っ白になりながらも、男に近づいた。

 みさきも青龍も、危険な目に合わせたくない。。

 しかしこのままでは、みさきが殺されてしまうかもしれない。

 愛梨は頭の中で、何度も白露に助けを求める。

 太った男がふーふーと息を吐いて、青龍を受け取ろうとする。


「よし、交換だ。先にそいつを俺たちに渡すんだ」


 青龍は威嚇するように鬣を逆立てている。


「きゅっ!」

「……みさきちゃんを、先に離して」

「疑り深いガキだな。ほらよ!」


 背の高い男がみさきを突き飛ばし、みさきは地面に放り出される。

 みさきは地面に倒れ込み、ゴホゴホと咳き込んだ。

 愛梨はみさきの元に駆け寄った。


「みさきちゃん! みさきちゃん、大丈夫!?」


 男は変わりにと青龍を奪い取る。首元を握り潰さんばかりに強く掴まれた青龍は、苦しそうに鳴き声をあげてジタバタともがいた。