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「しっかし見れば見るほど妙な生き物だな」

「でもずっとガキが一緒なんだよなぁ」


 男たちは青龍の子供を発見してから、それを捕まえる機会をずっとうかがっていた。

 愛梨が家に帰り、周囲に人がいなくなる夜が一番の好機だと判断したが、夜になると青龍の子供も、どういうわけか姿を消してしまう。近くにいるだろうと川を探しても、どこにもいないのだ。


 なぜかというと白露が青龍のことを匿っているからなのだが、男たちはそんなことを知るよしもない。

 そして昼になると、いつの間にか愛梨の腕の中に青龍がいて、捕まえる隙がない。


「あれ、何の生き物なんだろうな。なんか、天然記念物みたいな」

「とにかく違法なペットオークションでも見世物小屋でも、何でもいい。あいつを売り飛ばせば大金が入る。俺らの借金もゼロだ」


 そんなことを話しているうちに、男たちはいつも群れて遊んでいる子供が一人だけになったのに気付く。


「おい、ガキが一人になったぞ。今ならいけるんじゃないか?」


 男たちは顔を見合わせ、青龍の子と遊んでいるみさきに近づいた。


「お嬢ちゃん、ちょっといいかな」


 川の中で夢中になって遊んでいたみさきは、突然大人の男が現れたのに驚き、動きを止める。


「その動物ね、国で指定されてる外来種なんだ」

「外来種……?」

「特定の保護指定動物に認定されていてね。だから、俺たちがしかるべき施設で保護する」

「保護……」


 すべて打ち合わせで決めた口から出任せだ。小学生を騙すことなど容易い。

 現にみさきは難しい言葉をぶつけられ、困惑した表情で青龍を抱きしめている。

 男たちは手に持った檻を揺さぶりながら、彼女ににじり寄った。


「そうだよ。法律で決められたことだからね。協力してくれないと、お嬢ちゃんも警察に捕まってしまうかもしれない」


 みさきは自分が警察に捕まるかもしれないと言われ、途端に不安に襲われた。

 保護をしているというなら、彼らに引き渡したほうがいいのだろうか?

 正直怪しいとは思うが、どうやって断ればいいのかも分からない。

 迷いながら、青龍の子を差しだそうと手を伸ばす。



「みさきちゃん、りゅーちゃんを渡しちゃダメ!」