目が覚めるような、鮮やかな青。細長い身体は一見蛇のようだが、明らかに蛇とは違う。手足がある。それに角のような、鬣のようなものもある。


 ツチノコ? いや、あれは……まるで龍のようだ。

 少なくとも自分は一度も見たことのない生物だ。

 太った男は、必死に隣の男に問いかけた。


「な!? すげえだろ!? あれだよ! 売り飛ばせば、金になるかな?」


 背の高い男はべろりと舌なめずりをする。


「そうだな、いけるかもしんねぇ。とりあえず、檻やら何やら準備して……いや、今ならガキ一人か。脅して捕まえ……」


 そう話していた途中で、二人の背中にぞくっと寒気が走った。

 二人は目を見開き、互いに顔を見合わせる。


 ――今、確かに何者かに睨まれた。


 絶対に敵いようのない、恐ろしい生き物に。

 まるで山を歩いている時熊に遭遇したような、海で泳いでいる時にサメの背びれが見えたような。

 そういう生命の危機を感じさせる、絶対的な強者の瞳に見られた。


 得体の知れない何者かに、確かに睨まれた。

 しかし少女の周囲には、やはり何もいない。

 太った男は自分の腕を撫で、ぶるりと震えた。


「な、何か、今、寒気が……今の何だったんだ?」


 背の高い男は顔を顰めた。


「まぁいい。今日はひとまず出直すぞ。あのガキが面倒見てるなら、好都合だ。計画立てて、あの生き物、絶対に捕まえるぞ」