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愛梨と白露がいる場所から少し離れた茂みの中。
小さな銃声が響き、無機質な銃口から硝煙が立ち上る。
撃たれたのは野ウサギだった。腹から赤い血が溢れている。
ウサギの両耳を乱暴につかんで振り回し、太った男は舌を打った。
「ウサギを撃つのも飽きちまった。もっとデカイ獲物がいないもんか」
隣にいた背の高い男は、事切れたウサギを見てつまらなさそうにタバコの煙を吐く。
「あんまりここらをうろうろすると、ジジイとババアがうるせえしな。そろそろ別の場所に行ったほうがいいかもしんねぇ。同じ所に留まって、杉本に見つかっても面倒だからな」
男たちは二人ともカーキの上着と迷彩柄のズボンをはいて、リュックを背負っている。
太った男が言う。
「でもよぉ、俺確かに見たんだよ。変な生き物。あいつをもう一回見つけて捕まえられればなぁ。そしたら大儲けして、俺らの借金もチャラになんねぇかな」
隣の男は低い声で彼をバカにするように笑う。
「デカイ蛇だろ? しかも青い。どうせ酒に酔って、幻覚でも見たんじゃねーのか?」
「いや、蛇っていうか……本当にいたんだって、川に。俺ちゃんと撃ったし」
隣の男はゲラゲラと笑いながら言った。
「珍しい蛇なら、売り飛ばせば金になるかもしんねぇなぁ。そしたら俺らが杉本にしてる借金もなくなんだろうな。川ねぇ。本当にいるなら捕まえてくれよ」
男たちはギャンブルで、杉本という男に多額の借金をしていた。最初は調子良く金を貸してくれたのに、途中から取り立てが激しくなった。相手が堅気の人間でないと気付いた時には、周囲を調べ上げられていた。たまらず古い知り合いのツテを辿ってこんな山奥まで逃げてきたが、ここに隠れていることが杉本に知られたら一巻の終わりだ。
そう話していた時、男たちは川の方向に誰かがいるのに気付いた。
小柄な少女。表情がくるくるとよく変わり、口を大きく開いてニコニコ笑っている。
この辺りは地元の子供がよく遊びに来る。子供がいるのはおかしいことじゃない。
が、その少女は誰かと話しているようなのに、少女の周りには誰もいない。
――あんなデカイ声で一人言か?
気味が悪いガキだ、と背の高い男が顔を顰めた時だった。
「……おい、あれは何だ?」
少女の胸に、青い生き物が抱かれているのに気付く。
太った男は身を乗り出し、興奮気味に少女を指差した。
「あれだよあれ! あれが俺が見つけた、変ないきもんだよ!」
背の高い男は、まじまじとその生き物を見つめた。
「なんっだありゃ!?」