「お客様にはお客様の事情がございます。どんな風に過去を変えるかは、お客様の自由です」

「しかし、本当に過去に戻れるんですか?」


 まだ半信半疑の和田がたずねると、白露は自信に満ちた表情になる。


「もちろんです。ただし何点か注意事項が」


 和田はごくりとつばを飲んだ。


「この店に訪れることが出来るのは、一回だけ」

「一回だけ」

「そうです。料理を食べれば、時間をもう一度やり直すことができます。過去を変えるも、何もせずにただ思い出に浸るも、あなた次第です。

ただし、過去を一度変えてしまえば、当然現在にも影響が出ます。それがどんな形であなたに影響を及ぼすか、完全に予測することは不可能です。幸せになるために過去を変えたのに、予想も出来ない不幸な出来事が起こるかもしれません」


「不幸って……」


 和田は椅子に座ったまま、怯えたように後ろに下がる。


「たとえば今の時代にいるはずのあなたの大切な人間がいなくなったり、最悪この世界そのものが滅亡してしまうかもしれません」

「め、滅亡……?」