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愛梨はそれからも、毎日のように弁当を持って白露のところに通った。
遊び相手に白露だけでなく青龍も加わったのだから、山へ行くのが楽しくて仕方なかった。
「だいぶ傷も治ってきたみたいだね、りゅーちゃん」
傷口がほとんどふさがった青龍の子供は、嬉しそうに愛梨の頬に自分の頭を擦りつける。すっかり懐いている様子だ。青龍を発見してから三日経つけれど、まだ母親の龍が現れる様子はない。
白露は特に干渉するつもりもないらしく、いつも弁当を食べながら少し離れた所でそんな二人を眺めていた。
青龍は時々泳ぎたくなるらしいので、川で一緒に遊ぶことも多かった。
川岸に座り、愛梨と青龍の子供が遊んでいるのを見ていた白露が、突然立ち上がる。
金色の瞳が、怒っているように強く輝いている。
彼の鋭い眼差しに、愛梨は驚いて声をかけた。
「どうしたの、白露さん?」
「……誰かに見られている気配がしたのですが」
その言葉にはっとして、愛梨も周囲を観察する。
するとかなり離れた場所にあった草が、小さく音を立てて揺れた。愛梨たちから逃げるように、足早に去って行く足音が聞こえる。
遠ざかる後ろ姿が木陰から少しだけ見えたが、それが何者かまでは分からなかった。
「そういえば、隠れて猟をしている人がいるってお母さんが言ってた」
「あぁ、ここら辺をうろついている輩がいますね」
「何人いるの?」
「大抵二人で行動しています。時々山に入っては、動物を撃っているのを見かけます」
その言葉に愛梨は憤慨した。
「白露さん、この山の神様なのに止めないの!?」
「私は神ではなく、ただのあやかしです。とはいえこの周辺は私の土地ですからね。あまりに目に余るようなら、罰を与えます。食べるための狩りならともかく、戯れで命を奪うのはさすがに見過ごせない」
愛梨はしばらく怒っていたが、やがて怒っているのにも飽きたのか、龍の子供と一緒にそこらを駆け回って遊びはじめた。
やがて大きな木にもたれて休憩していた愛梨は、疲れたのかすぅすぅと寝息をたてて眠ってしまった。