「もしもう一度やり直せたら、私は園子と……妻とは結婚しません。

今度はもっと、優しそうな女性と結婚します。いや、また誰かと結婚をしてこんな思いをするくらいなら、もう一生独身でもかまわない」

「そ、そうなんですか……?」


 拳をぎゅっと握り締め、和田は熱弁する。


「当たり前ですよ! 結婚なんてもう、人生の墓場ですよ! 

毎日夜遅くまでくたくたになるまで働いてるのに、ねぎらいの言葉一つありません。それどころか晩飯がカップラーメンです。この間は缶詰でした。私は猫じゃありません! 

いや、多分そこらの飼い猫の方が、よっぽど私より良い物を食べてます。休日に少し休んでいようものなら、家のことを手伝え、家事をしろって罵声を浴びせられて、庭の草むしりをさせられたり、買い物に行かされたり。

そういう自分は昼間からテレビの前で寝っ転がって、ずっとせんべいか何か食べながらワイドショーを見てるんですよ。あれは人間じゃなくて、セイウチですよセイウチ!」

「セイウチ……」

「そうです。私はもう、セイウチのために働き続ける生活に疲れ果てました」


 一気にそうまくしたてると、和田は頭を垂れる。

 愛梨はかなりショックを受けた様子だった。結婚への憧れが砕け散ったようだ。

 白露は彼女をたしなめるように、穏やかな口調で言う。