「鏡華ちゃんと言うのは、準優勝者の月峰鏡華さんのことでしょうか?」
「はい、そうです」
「お二人は、普段から仲がいいんですか?」
ひかりは少し考えてから、笑顔で続ける。
「友達とか、仲がいいとか、そういうのとはちょっと違うんですけど。憧れの人なんです。
ずっと隣に鏡華ちゃんがいたから、私はここまで来ることが出来ました。辛い時、苦しい時、鏡華ちゃんも頑張ってるんだって思うと、勇気をもらえたんです」
それからひかりはケガをしていること、治療に向けて少し休養を取ることを話していた。前回はケガのことは話していなかったはずだが、それより鏡華はさっきのインタビューの内容に、開いた口がふさがらなかった。
愛梨は興奮した様子で鏡華に話しかける。
「ひかりさん、鏡華さんのことを憧れの人だって言ってましたね!」
「いやいや……ないでしょ、憧れる部分とか」
困惑していると、当のひかり本人がちょうど廊下を歩いてくる。
「あ、鏡華ちゃーん、お疲れ様。鏡華ちゃんもインタビューだって、テレビ局の人が探してたよ」
鏡華は彼女をつかまえて問いただした。
「ちょっとあんた、さっきの何なのよ!?」
「見てたの? 照れるなぁ」
相変わらず気の抜ける声で話す女だ。
「あのね、お母さん、来てくれたんだー」
「あっそう、それはよかったわね」
「うん。ずっとお父さんに、私と会うのを止められてたんだって。でもこれからは、電話とかしてもいいって」
「そうなの。よかったわね。って、そっちじゃないわよ! あたしのこと、あれ、どういうつもり!?」
鏡華の様子を見て、ひかりは嬉しそうに頬を緩ませる。
両手でぎゅっと鏡華の手を包んで言った。
「鏡華ちゃん、本当にありがとう。鏡華ちゃんは、ずっと私の憧れの人だから」